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経費についても安上がりになることが多い。
会社分割の場合には、甲会社の商号、屋号、看板、名称等を続用することには十分に慎重でなければならない。
特に、無催告分割をする場合には、用心すべきである。
会社分割で商号を続用するのは、甲会社の債権者のなかに乙会社に向かって訴訟を提起してきそうな者がまったくいないと考えられる場合だけにしたほうがいい。
吸収する方法は、吸収分割のほかにもいろいろあります。
まず、吸収される会社が新設分割を行い、次いで、その新設承継会社発行の株式全部を買い取る方法です。
つまり、乙会社を子会社として運営する方法です。
この方法では、文字どおりの吸収ではありませんが、新規事業に乗り出す当初のリスクを考えれば賢明であるかもしれません。
新規の事業に進出する方法のうちでも、吸収分割は、他社で実際に行われている営業を引き取るわけですから、初めから自社で立ち上げる場合にくらべて時間を大幅に節約できます。
経費についても安上がりになることも多いはずです。
他社の営業を引き取る手段として、営業譲渡(譲受)もあります。
営業譲渡の場合は、当然、現金による営業譲渡代金の支払いが必要なほか、後述するように手続きも煩雑です。
これに対して、吸収分割では、営業権を所有している会社またはその株主に対して、承継会社が新たに発行する株式を交付すればすみますので、現金による支払いの必要がありません。
ただし、株券の交付により営業権を取得するためには、分割会社の経営者に対して十分な説得をすることが肝要です。
分割会社の現状の株式を所有しているより、将来性の高い承継会社グループに入り、その株式を(間接も含め)取得したほうが経営者や社員にとってもいかにいいかという説得です。
事例は、従来、M&A(合併・買収)で取り扱われてきましたが、会社分割の技術がなかった時代には、これを実現する方策は営業譲渡しかありませんでした。
すでにみてきたように、営業譲渡の技術では債権者の同意なく債務を別会社に移転することはできませんから、債務の移転にあたり、いちいち債権者の同意を取得する手続きをとらねばならず(この場合の債権者の同意は債務移転の法的要件であって対抗要件ではありません)、煩雑な手続きを踏まなければなりませんでした。
方法としては、債権者のうちの1社に他の債権者に対する肩代わり弁済をしてもらい、債権者の数をできるだけ絞って、できれば債権者を1社に絞ってから営業譲渡を実行するやり方をとるのが賢明でしょう。
これに対して、会社分割の方法では、債権者の承諾なく債務を移転することができます。
会社分割という法技術がいかに優れているかを示しているといえます。
会社分割と営業譲渡(譲受)のどちらが適しているかという比較問題には頻繁に出くわします。
そこで、営業譲渡との比較をもう少しつっこんで検討しましょう。
その1つとして、甲会社に不動産があり、その不動産を乙会社に移転しようと計画する場合を考えてみます。
とりあえず、その不動産を使ってどのような営業が行われているかに関係なく、とにかく物体としての不動産の所有権を、その不動産上で営まれている営業の承継とともに乙会社に移転する場合を考えます。
不動産所有権の移転には、登録免許税と不動産取得税がかかります。
この額はばかにならないどころか、不動産の実勢価額が低下してきた現在では、相対的にかなり高額です。
営業譲渡による不動産所有権の移転には、通常の不動産所有権の移転と同様に登録免許税(固定資産課税台帳価額の1000分の50)と不動産取得税(固定資産課税台帳価額の100分の4)が課税されます。
ところが、会社分割の場合は、登録免許税が固定資産課税台帳価額の1000分の6に軽減されますし(租税特別措置法第80条の2、租税特別措置法施行規則第30条の3第1項)、不動産取得税については免税になります(地方税法第73条の7第2号、地方税法施行令37条の14)。
この点は、新設分割であっても吸収分割であっても同じです。
不動産取得税の免税措置には条件がありますが、会社分割によって分割される事業(つまり、B事業)に使われていた資産や負債が乙会社に移転していることとか、従業員の80%以上が乙会社の業務に従事することが間違いないことといった条件ですから、営業の承継を実現しようとする通常の会社分割であれば、この免税措置が適用されるとみて間違いはありません。
なぜこのような登録免許税の軽減措置や不動産取得税の免税措置があるかといえば、登録免許税法も地方税法も、会社分割による所有権の移転は、信託と同様に形式的な移転であって真実は移転していないのだととらえているからです。
このように、会社分割には、法人税法上、「税制適格」であれば課税されないことに加え、登録免許税が減額になり、不動産取得税が免税になるという特典がありますから、不動産の譲渡にあたっては、単純な売買ではなく、また営業譲渡の方法でもなく、会社分割の方法で実現できないかと検討してみることをおすすめします。
とはいえ、課税庁としては会社分割を利用した租税回避はないかと目を光らせているでしょうから、本当に営業を承継するといえるかどうかを慎重に検討しなければなりません。
ところが、です。
慎重に検討してみても、営業の承継ともいえるから会社分割として認めることができるし、営業譲渡で行っても、特段、法律上の障害があるわけではないし、そのうえ単純な不動産の譲渡で行っても問題がないという、まことに珍しい事例があります。
それは、ビル所有賃貸業者が複数のビルをまとめて一括処分するとか、ホテル所有営業事業者が複数のホテルを一括して処分するような場合です。
ホテル経営の場合は、顧客誘引の観点からホテルの名称が意味をもつ場合が多いでしょうし、経営ノウハウの移転という観点からも、売掛金および買掛金の承継や営業を中断することなく継続していく必要が強いでしょう。
そのうえ、厨房の什器備品、顧客用の箸膳茶碗、玄関や廊下にかけられた美術品・装飾品など、ホテル本体と一体になった有体動産も一緒に移転しなければ、買い手がただちに営業を開始できないため、不動産だけを裸にして譲渡する不動産譲渡の手法はふさわしくないでしょう。
したがって、営業譲渡か会社分割の手法が選びとられるのが通常です。
しかし、ビル経営の場合は、顧客誘引の観点から、ビルの名称が意味をもつ場合などまず考えられないでしょう。
経営ノウハウがないとはいえないでしょうが、あるとしても価値的には大したことはなく、有体動産も特に引き継がなければならないものはなく、営業譲渡や会社分割でなければならない理由に乏しく、不動産そのものを譲渡することで目的は十分に達成されそうです。
これに対し、テナントとの賃貸借契約も、所有権の移転とともに移転させようとするのでしょうから、賃貸業そのものが移転するのであり、裸の不動産そのものが移転するだけではないから営業譲渡か会社分割でなければ筋が通らないといえそうですが、判例上、賃借人保護の観点から、貸しビル所有権の移転には賃貸借契約も必ず随伴していくと解釈されています(この点は判例上あまりにも明瞭ですから判例を引用する必要がありません)から、不動産だけの移転という方法をとっても、別段、不都合はないのです。
では、ビル経営の場合は、会社分割でも営業譲渡でも不動産だけの譲渡でもまったく同じかといえば、そうではありません。
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